6 2人リマーで大混乱
 
リスター:アーノルド・リマーに捧ぐ・・・何これ?
リマー:ビデオだ。 私の最後の。
リスター:死ぬとこ、ビデオに撮ったの?
アンタって、変わってるねえ。
リマー:なんで? 結婚式や誕生日も撮るじゃないか。
リスター:友達呼んで一杯やりながら、自分が死ぬビデオを見せるわけ?
リマー:死は私の人生にとって、一大行事だったのだ。
 

・・・新しい部屋に移る、リマー・・・

リマー:これぞ、我が人生最大の選択。
もう、オマエのバカづらを見る事もなきゃ、バカな癖に苦しめられる事もないだろう。
リスター:バカ? オレが何をした?
リマー:ハミングさ。 この2年、故意にしつこく。
私が勉強しようとするやいなや、フーン、フーン・・・。
リスター:ちょっと待てよ。 じゃあ、士官になれなかったのは、オレのハミングのせいだっての?
リマー:ハミングだけじゃない。リスター、オマエの行動全てが私にとっては嫌がらせだった。
リスター:人生しくじったの、自分のせいじゃないか。なんでもかんでもオレが悪いように言うなっつうの。
リマー:言うかわりに出ていくんじゃないか。ゴミためから、成功と栄光の部屋へ。私がこれから共に暮らす者は、私を理解し、励まし、ウィットに富んだ会話を与えてくれるに違いない。
分身リマー:問題はないか?
リマー:ないとも、全速力でそちらに向かうよ。
・・・素晴らしい。もっと早く分身をつくっておけばよかった。
 

リスター:何で、どっちもタバコ吸わないのに、禁煙サインがあんの?
リマー:吸わないのに、それを貼るところが洒落てるんだ。
部屋も明るくなるしな。
リスター:え〜、何これ?
「リマーは NO.1」
「全ては、リマーのおかげ」
「リマーこそベスト」
普通、自分でこんなの貼る?
へへへ・・・これだけで、今年の冬中、笑って過ごせるよ。
リマー、分身リマー:ゴキブリめ。

リスター:なんだこれ? 「リマー死のビデオ」
ホリー、ポップコーン持ってこさせて。ビデオ観るから。
ホリー:BSc SSc ・・・なんの事でしょう?
リスター:ヤツの持ってる水泳の免状さ。
何の関係があるんだろうねえ。 アホだねえ。
ビデオの中のリマー:これより今際の時をお見せする訳ですが、その前に私が詩を朗読し・・・。
リスター:わー、早送りして。つまんない所は、トバすに限る。

・・・それでは、アーノルド・リマーの最期の瞬間です・・・

ビデオの中のホリスター船長:メンテは君の仕事だろう?
ドライブプレートの修理にミスがあってはならんのだ。
ビデオの中のリマー:わかってます。何が起きても全責任は私にあります。

・・・船内で爆発が発生する・・・

ビデオの中のリマー:ガスパーチョ・スープ!
リスター:最期の言葉が、ガスパーチョ・スープ?

分身リマー:キサマはなあ、フヌケのタマなしだ!
父親にも嫌われていた。
リマー:ウソだ。 キサマは、おおぼらふきの最低のクソ野郎だ!
分身リマー:オマエは、みんなに嫌われていた。母親からもだ!
リマー:ママは愛してくれた。 忙しかっただけだ。 母の悪口を言うと許さんぞ! 私も男だからな!
分身リマー:少しは成長しろ! ガスパーチョ!
リマー:何だと?
分身リマー:いいか、ガスパーチョと言ったんだ!
リマー:本当に、よくもそんなひどい事が言えるよな。
 

リマー:リスター、ここで寝させてもらうよ。
リスター:何かトラブってんの?
リマー:いやあ、全て順調だよ。
リスター:今、ちょっと聞こえたからさあ。 ケンカの声みたいな・・・。
リマー:自分の分身と口論するのは、実に楽しいものだよ。
仕事の事で意見が別れた。 別に悪意があって争ってる訳じゃないが・・・

・・・「クタバレ、アホゾンビ!」 隣の部屋の分身リマーの声が聞こえる・・・

リマー:ちょっと失礼・・・すぐもどる。
リマー:静かにしないと、トイレに流してやるぞ!
クソのつまった大腸野郎!

リマー:何の映画?
リスター:オーソン・ウェルズの「市民ケーン」
映画キライだろ?
リマー:キライ? まさか、映画コースをとったくらいだよ。
市民ケーンといえば、オーソン・ウェルズだったな?
リマー:ああ、やはり市民ケーンだ、面白い。

・・・分身リマーが入室し、リマーの前の席に座る・・・

リマー:ちょっと、見えないんだよ!
そのモジャモジャ頭と、バカでかい耳のおかげで、何も見えない!
分身リマー:どこに座ろうと、私の勝手だ。 気に入らないんなら、自分が動けばいいだろう。
リマー:では・・・どこに座ろうかな?
よし、ここにしよう。

・・・分身リマーの前に座るリマー・・・

分身リマー:何と、子供っぽい生き物だ!
リスター:2人とも、少し大人になれよ。 オマエたち、どっちか消えるっきゃない。 どちらにしようかな、なのなのな。
あんたが消えろ。
分身リマー:ちょっと待て。早まるな。
リスター:自業自得ってやつ。 コチャンスキーのホログラムを渡してくれてたら、こんな事にはならなかった。 じゃあ、操縦室に10分後ね。
分身リマー:信じられない、私が死ぬとはな・・・。

・・・正装する、リマー・・・

リスター:あー、勲章なんて持ってたの? 何の勲章?
リマー:勤続3年賞に、勤続6年賞、勤続9年賞に、勤続12年賞だ。
リスター:ところで、ガスパーチョ・スープってあれ、一体、何の事なの?
リマー:死ぬんだから、もう言ってもいいだろう。
ガスパーチョ・スープ、あれは人生最高の夜だった・・・。
船長にディナーに招かれたのだ。船に乗ってわずか14年目の栄光だ。 6人の士官と共に、華々しくデーブルについた。
食事はガスパーチョ・スープから始まった。 私はガスパーチョ・スープが冷たいスープとはつゆ知らず、シェフを呼んで「温め直せ」と文句を言ったのだ。
シェフはそうした。 その時のみんなの顔は一生忘れる事ができない。 シェフを笑っているのかと思ってた。でも本当は、熱いガスパーチョ・スープをふーふーいいながら飲んでる私を笑っていたのだ。
それ以来、ディナーには2度と招かれず、私のキャリアも終わった。
基礎訓練の時に一言、ガスパーチョ・スープは冷たいスープだと教えてくれていたならば、今頃は司令官になっていただろうに。ガスパーチョのおかげで、今はこんな役立たずだ。
決してどん底からは抜けられない。なぜか分かるか? 生まれた家庭が裕福ではなかったからだ。
上流家庭で生まれていれば、すぐガスパーチョ・スープを飲まされていただろうに。 ミルク代わりに飲んでいたに違いない。 右のオッパイはガスパーチョ、左のオッパイは、冷えた極上のシャンペン・・・。
キャット:いつまで、グチ言ってんの? 早いとこ消しちまおうよ!
リマー:ああ、消すがいいさ!
さっさと私を追放しろ! せいせいするぞ!
リスター:もう追放した。 もう1人の方。
リマー:何? 消したって?
それを隠して、楽しんでいたのか?
リスター:あ〜た〜り〜。
こうでもしないと、ガスパーチョ・スープの事、言ってくれなかっただろう?
リマー:あたりまえだろ、言ったらオマエ、一生このネタを持ち出して私を苦しめるだろうが?
リスター:そんな、そんな事絶対にしない。 ガスパーチョ事件の事は2度と言わないよ。約束するって。
リマー:わかった。 君はだらしのないところがあるが、約束を破るような男ではない。今日は信じるとするか。
では、乾杯するか。
リスター:するっチョ!

 

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