1 それは終わりから始まった
 
・・・巨大宇宙船レッドドワーフ号の一角・・・

リスター:ねえ、でもあれ本当なんでしょう?あんたのランク。
ロボットよりも低いって。
リマー:それももう少しだ。私はトップを目指している。
リスター:じゃあ、試験にパスしなくっちゃ。どうせまた受けたって落ちるだろうけどね。
リマー:前回は、落ちたといっても点がほんのちょっと足りなかっただけだ。
リスター:ウソつけ。答案に「私は魚です」って400回書いて、変な踊りやって気絶しちゃったって、ピーターセンが言ってたもん。
リマー:前回は排水溝のつまりの直し方の論文を書いたのだ。だがそれはあまりにラディカルで、発想が自由だったため、並の試験官には理解できなかったのだ。
リスター:そう、アンタが魚だから。
リマー:おまえが吸っているのはタバコか?
報告書にねちねちびっしり書いてやる。
 

リマー:あした試験なんだよ。どうしても合格しなきゃ。
リスター:カンニングしてまでも?
リマー:体で覚え込むんだ。暗記の補助さ。既にある知識を整理するためなんだ。
リスター:テキストそのまま全部写してんでしょう?
ねえ、答案じゃなくて、自分の体採点してもらったら?
とにかく、まともに受けてダメならしょうがないじゃん。無理すんなって。
リマー:君がそう思うのは、野心も願望もなく、一生最低のランクで構わないと思っているからだ。
リスター:オレだってちゃんと計画はある。
リマー:宇宙で一番のおきらく野郎になろうって計画か?
リスター:はずれ。五カ年計画だよ。あと2回宇宙飛行をする。給料は全部貯めてある。だから石鹸とかオーデコロンとか靴下とか買わないんだ。貯めた金でフィジーに牧場を買って、羊や牛を飼うんだ。あそこはメチャ安だから。
リマー:火山の爆発で土地が海面より1、8メートルも下がってしまったと聞いてるぞ。
リスター:そんなの平気さ。
リマー:じゃあ、羊は?浮き袋でも買ってやんのか?イルカと交配させれば、ジャンプするマトンが出荷できるかもなあ?
いっそ、水もしたたるニットウエアも売り出しちゃあ、どうだ?
リスター:おいおい。そういうケチをつけるから、あんたには何も言いたくないんだよ。
 

・・・試験を受けるリマー。
腕に書いたカンニングを手で拭い、手形を押す。
その後、試験官に敬礼し、気絶する。・・・

リスター:おいでフランケンシュタイン。あら、おなかでっかくなっちゃって。五つ子じゃないといいけどねえ。
おい、フィジーの写真、もう一回見たいか? フィジーいいとこだぞ、見ろ。

 

・・・船長室に呼ばれるリスター・・・

リスター:なんかご用っすか?
ホリスター船長:ネコは何処だ?
リスター:はい? ネコって?
ホリスター船長:リスター、検疫を受けてない動物を持ち込んで全乗組員の命を危険にさらしただけでも十分愚かだが、それに加えて、ネコと自分の写真を撮って、船の現像所で現像させたとはたいしたやつだよ。今すぐそのネコを渡しなさい。
リスター:でも、もしオレがネコを飼ってると仮定してですよ。私のフランケンシュタインをどうする気?
ホリスター船長:医療センターに送って、切り刻んで検査をする。
リスター:終わったら、つなぎ合わせてくれる?
ホリスター船長:リスター、ネコは死ぬんだ。
リスター:簡単におっしゃいますけど、あの、ネコとオレ、赤ん坊ができるんです。で、フィジーに行って、牧場をつくって羊と牛と馬3頭飼う計画なんですよ。
それだけは誰にも邪魔させない、尊敬する船長さんでも。
ホリスター船長:帰還するまで、カプセルに入って18ヶ月分の給料没収されたいか? それとも、すぐネコを渡すか?
選べ!
 

・・・カプセルに入る事にしたリスター・・・

船員:カプセルでは時間が静止してしまうんだよ。
鉛がエックス船を通さないように、この部屋は時間を通さない。つまりいったんこの部屋に入ると、時間の中では君は存在しない事になる。
それでは、18ヶ月後に。

ホリー:おはようございます。もうカプセルから出られても安全です。
報告がありますので、操縦室へどうぞ。
リスター:あれ?みんなどこ?
ホリー:亡くなりました。
リスター:誰が?
ホリー:全員です。
リスター:ホリスター船長も?
ホリー:全員亡くなりました。
リスター:ピーターセンは生きてるでしょう?
ホリー:全員亡くなりました。
リスター:リマーは?
ホリー:亡くなりました。一人残らず全員の方が亡くなったのです。
リスター:まてよ、じゃあ、みんな死んじゃったっていうの?
ホリー:・・・やはりカプセルから出すべきじゃなかった。
 

リスター:どうして?
ホリー:ドライブプレートの修理が不十分だったので爆発し、全員が致死量のカドミウム2をあびました。封鎖も間に合わず・・・。
リスター:ひどい。
リスター:待てよホリー、オレどのくらいカプセルにいた?
ホリー:放射能が安全なレベルにまで減少するまで待っておりました。
リスター:どのくらい?
ホリー:300万年です。
リスター:300万年!? 図書館の本返してない。
ホリー:図書館の係りも、みんな灰になりました。
リスター:みんな死んじゃったんなら、オレだけ?
ホリー:物理的にはイエス。
リスター:物理的ってどういう事だよ?
 

リマー:やあ、リスター。久しぶりだな。
リスター:ホログラムになったの?
リマー:そう、死んだからだ。 全てオマエのせいだ。
リスター:オレが何したの?
リマー:オマエがバカネコなんか飼ってカプセルに入らなければ、プレートの修理を手伝ってくれれば、こんな事にはならなかったんだよ。
リスター:オレは何もしてないよ。自分だろ。 もっと前向きに考えなさい。
リマー:どこが前向きだ?私は死んだ。ホログラムになってイグアナの剥製よりも脳ミソの軽い男と宇宙に放り出された。
あー、これぞ絶望だ。
リスター:イグアナの何?
それにアンタ、別に死んでないだろ?そこにいるんだから、本当に死んだんじゃないよ。ホログラムだっていいじゃん。
リマー:確かにその通りだ。では、協力してくれ、私の手となり感触となり・・・
リスター:アンタが触りたいもん、ろくなもんじゃないから、ヤダ!
リマー:君は、操縦室で喫煙しているのか?
リスター:そう、300万年禁煙していたけど、また始めちゃった。

キャット:あれ?何これ?オレの影?
オレって影までかっこいいのね。、オレもかっこいいし、影もかっこいいし、いいコンビ! アンビリーバブルコンビ!
リスター:ホリー、何だありゃ?
ホリー:あなたのネコと子猫は安全な部屋に隔離されて生き延びました。300万年命を受け継ぐうち、いま通路で見たような生物に進化したのです。人間が猿から進化したのは知ってます?彼はネコから進化したのです。彼の先祖はネコなのです。つまりネコの子孫であるキャットなのです。
キャット:アーオ!
リスター:こんちは・・・キャット・・・?
リスター:他のネコ族の友達は? 死んじゃったのか? どうなった?
リマー:どうだっていいよ。コイツも捨てちまえ。
リスター:だめだよ、オレと一緒に帰るんだから。
リマー:帰る?何処へ帰るんだ?
リスター:地球だよ。
リマー:地球?どうしてまだ地球があると思う?あったところで300万年はネコをここまで変えた。人類がどこまで変わっているか。大昔に海から上がってきたアメーバ呼ばわりされるのがオチだ。
リスター:フランケンシュタインじゃなくてもネコはネコだ。
キャット:フランケンシュタイン? ネコの学校で習ったなあ。聖なる母は、アホのクロイスターに救われた。クロイスターは冷凍されて我々ネコ族の命を助けた・・・って。
リスター:違うよ、クロイスターじゃないって、オレだ、リスターだ。おバカのリスターだよ。
キャット:彼はいつか戻って、約束の地フューシャルに導いてくれる・・・。
リスター:違うよ、フューシャルじゃない、フィジー。
連れてってやるよ、フィジーに連れてってやる。
リスター:ホリー、フィジーに進路を取れ!
覚悟しろ地球。アメーバが戻るからな!
 

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